無料相談会やお客様と打合せをしていて、よく「遺言書を作ってください」と言われることがあります。 確かに日本行政書士連合会HPには、
行政書士は、行政書士法(昭和26年2月22日法律第4号)に基づく国家資格者で、他人の依頼を受け報酬を得て、役所に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成等を行います。
と書かれています。 しかし行政書士が遺言書の文面を考える(起案)ことはあっても、依頼人本人に代わって遺言書(自筆証書)を書くことはありません。なぜなら自筆証書遺言は、本人の自筆によらなければ無効となるからです。
また公正証書の場合も、最終的に作成するのは公証人であり、行政書士ではありません。
このことは行政書士だけでなく、他の専門家(弁護士・司法書士)に依頼しても同様です。
では行政書士など専門家は、遺言書を作成する際、何をするのかと言うと、それはズバリ
“法的に無効とならない遺言書を作成するためのサポート”
です。
以下は、当事務所での「遺言公正証書作成サポート」の一般的な流れです。
①(始まり) 「遺言書を作りたい」という相談者(被相続人)とお会いして内容を聞きます。
②被相続人の戸籍等を取得して相続人調査を行い、相続関係図を作成します。
③登記簿謄本などを取得して相続財産調査を行い、財産目録を作成します。
④公証人に依頼人の希望する内容を伝え、法的に問題がないかなどを協議します。
⑤保証人の手配を行います。
⑥公証人と協議して出来上がった遺言書の下書き(起案)を依頼人に確認して頂きます。
⑦公証役場で遺言書作成に立ち会います。(終了)
もちろん実際には、上記のように1回で済むようなことはなく、依頼人と公証人の間を何度も往復することもあります。
以上の点から専門家に依頼するメリットは、
① 面倒な書類の取得作業をしなくてよい
② 公証役場に何度も足を運ばなくてもよい
③ 法的に問題がなく且つ自分が希望する内容に一番近い遺言書を作成できる。
ということになります。 特に③は最大のメリットと言えます。
と言うのも専門家に内容確認させることなく書き上げた遺言書(自筆証書)には、開封してみると法的に無効であったり、拘束力のないものであることが多々あるからです。
またたとえ法的に問題がなくても自筆証書による遺言の場合、残された家族が遺言書の存在に気付かなぬままということもあります。これでは苦労して遺言書を書いた意味がありませんし、残された家族にとっても迷惑な限りです。
これに対して、公正証書による遺言の場合、法的に問題があるようなことはありませんし、原本は公証役場で保管されるため紛失・改ざんの心配もありません。
そこで当事務所では、「遺言書を作りたい」というお客様に対して、公正証書による遺言をオススメ致しております。
当事務所では、遺言書作成のサポートを致しております。
一般的に遺言書は、自筆証書による作成と公正証書による作成に分けられますが、当事務所は、“無効”の心配や家庭裁判所での“検認”といった面倒な手続きの必要のない公正証書による遺言作成をお勧めいたします。
《遺言書作成のメリット》
遺言者の意思を最大限に反映させられ、残された家族に困るようなことがありません。
① お子さんのいらっしゃらないご夫婦は、遺言書がないと予想外の事態に見舞われます。
お子さんのいらっしゃらないご夫婦の場合、遺言書がないと相続権は、残された配偶者だけではなく、遺言者の親または兄弟姉妹にまで及びます。
この場合、被相続人の親が生きていれば、親は相続財産の3分の1を相続できます。
親が既に亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続財産の4分の1を相続できます。
親や兄弟姉妹の相続分を預貯金で充当することができればいいですが、最悪、自宅や土地を売って現金化しないといけない場合もあります。
ひとり残される配偶者のことを考えると、このような事態は絶対に避けないといけません。
しかし「残された財産をすべて妻〇〇に相続させる」と書いた遺言書を残しておけば、遺留分のない遺言者の兄弟姉妹に財産を請求する権利は発生しません。
日頃から親密な関係にある兄弟姉妹ならまだしも、ほとんど付き合いのない兄弟姉妹に財産を譲るくらいなら、子もいなく一人残される配偶者にすべての財産を残すことがベストな形と言えるのではないでしょうか。
② 法律上、内縁関係の相手方に相続権はありません。
そのため遺贈について書いた遺言書がないと、長年連れ添った相手方には何一つ財産を残してあげることができません。
これに対し、遺言書で、法定相続人には遺留分相当額の財産を相続させ、「残りのすべてを(内縁関係のある)〇〇 〇〇に遺贈する」とすれば、内縁関係の相手方にも財産を残すことができます。
尚、「相続」と「遺贈」の違いについて
「相続」とは、遺言者が相続権のある(相続人)に財産を分け与えることを言います。
一方、 「遺贈」とは、遺言者が相続権の無い方(非相続人)に財産を分け与えることを言います。
③ 相続手続きがスムーズに行えます。
遺言書があれば、預貯金、土地・建物といった不動産など相続財産の名義変更がスムーズに行えます。これは被相続人死亡後、何かと忙しい家族にとっては大助かりと言えます。
しかし遺言書がないと、相続人調査・相続財産調査を経て、相続人全員で遺産分割協議を行い、全員がその内容に合意しないと手続きが出来ません。これは残された家族にとって肉体的にも金銭的にも相当の負担がかかります。
《遺言公正証書のデメリット》
ずばり、遺言公正証書の場合、作成費用が発生することです。 公証人への手数料は、遺言書作成時の相続財産の価額(概算)と相続人の人数によって決まります。
また行政書士など専門家に遺言書作成の依頼をされた場合は、当然その費用も発生します。
作成時にほとんど費用のかからない自筆証書遺言ですが、遺言者が亡くなった後、相続人が勝手に遺言書を開封することは法律違反(罰金)であり、家庭裁判所で“検認”という面倒な手続きを踏まなくてはなりません。
また遺言書がない場合は、相続人全員の協議・合意のもとで「遺産分割協議」を作成しないと、不動産の所有権移転の名義変更などは一切行えません。
以上の点を踏まえると、遺言公正証書の作成にかかる費用が必ずしもデメリットとは言えないことは明らかです。
《遺言公正証書作成の流れ》
① 依頼人(遺言者)と直接お会いして、遺言の内容をお聞きし、法的に問題がないか公証人と協議してから文章にまとめていきます。
(遺言作成時に決めておく主な事項と必要な書類等)
・依頼人
印鑑証明が必要になります。
・相続人
依頼人(遺言者)の戸籍・除籍謄本等で相続関係を調べます。
・相続財産
不動産に関しては、固定資産評価証明書、登記簿謄本(全部事項証明書)で調べます。このほか預貯金、有価証券、宝石、美術・骨董品、自動車などが該当します。
相続財産がすべて判明したら、「財産目録」を作って分かりやすくしておくと便利です。財産目録が出来上がったら、それを参考にどの財産を誰に相続させるか考えます。
例えば
「土地はAに相続させる」、
「建物はBに相続させる」、
「○○銀行の普通口座は、Cに相続させる」
といった感じで決めていきます。
ここで気になるのが、家財道具などをどうするかです。
「業務案内・遺言・相続手続き②」に続きます。
この場合、「他の財産は、相続人どうしの協議に任せる」などと曖昧にしてはいけません。
「家財道具を含むその他の財産は、Dに相続させる」
と明確にしておきましょう。
と言うのも、遺言者が亡くなった後、処分したい財産もあれば、複数の相続人が欲しがる財産もあるかもしれません。 しかしそれらを管理する人、つまり相続人が決まっていなければいつまで経っても電化製品一つ捨てることすらできなければ、一つのモノを巡って相続人どうしで新たな争いが発生するかもしれません。
これでは何のために遺言書を書いたのか全く意味がありません。
せっかく遺言書を作るのなら、そのあたりのこともハッキリさせて、残された人が困ったり争いが起こらないようにしてあげるのがベストでしょう。
また、たとえ法的拘束力がなくても、どうしても言い残したいメッセージ等があればおっしゃてください。
何度も言いますが、せっかく作るのですから、自分が納得いく遺言書を作成しましょう。
・祭祀の主宰者を指定
遺言者亡き後の墓地・仏壇の管理者を指定します。
・遺言執行者を指定
遺言執行者は、遺言者亡き後、遺言内容を実現させるために様々な手続きを行えます。
特に便利なのは預貯金の引出し等です。通常、金融機関では預貯金の契約者が亡くなると、その方名義の口座を凍結してしまい、現金の引き出しも口座の解約も容易には行えません。
ところが遺言公正証書に遺言執行者が指定されている場合、面倒な手続きを経ることなく、現金の引き出しもでき、葬儀後に必要なまとまったお金の入用にも困りません。
・2名の証人
作成当日、公証役場で立ち会っていただく証人2名が必要となります。
但し、証人には一定の制限があり、利害関係者に該当する方は就任できません。
身分証明書として、住民票または運転免許のコピーなどが必要となります。
尚、行政書士には守秘義務もあるため証人に就任することが多々あります。
② 内容確認を数回行い、問題がなければ、公証役場での作成日時を決定します。
また公証人から料金の提示もあります。
尚、公証人に支払う公正証書作成費用は、相続財産の価額・相続人の人数などによって決められます。
③ 作成当日、持参するものは、
依頼人(遺言者)は、実印と代金
証人は、認印でOKです。
公証役場に着くと、公証人が遺言書を読み上げ、依頼人・証人が間違いがないか確認します。
間違いがなければ、原本、正本、副本の3部に押印されて出来上がりです。
3部のうち1部は公証役場で保存されるため、偽造や紛失の心配がありません。
残った2部は依頼人に手渡されるので、最低1部は信頼できる人物に渡しておく方がよいでしょう。
※ 上記の流れは、基本的なものにすぎず、状況に応じてかなり変更されることもあります。
しかし、もし遺言書が残されていなかったら、どうするか?
遺産分割協議書を作成しなければなりません。
ご家族の誰かが、遺言書を残さず亡くなった場合、その方名義の財産を相続しようと思っても、相続人全員で「遺産分割協議書」を作成しないと、名義変更等の相続手続きは一切行えません。
《遺産分割協議書作成の流れ》
① 相続人調査
故人の「出生から亡くなるまでの戸籍・除籍謄本等」を全部集め、法定相続人を確定させます。
これらの書類は、その後の名義変更手続きに必要となるので紛失しないいよう大切に保管しておきましょう。
② 相続財産調査
故人名義の土地・建物、預貯金、有価証券、宝石、美術・骨董品、自動車などを調べていきます。
万が一、借金等による負債の方が大きい場合は、家庭裁判所に「相続放棄」の手続きをすることをオススメいたします。
尚、「相続放棄」の手続きは、故人の死亡を知ってから3か月以内に行わないといけませんが、葬儀・初七日・四十九日のことを考えると、時間的余裕は全くないのと同様です。
③ 遺産分割協議書の作成
相続人、相続財産のすべてが判明したら、「誰が何をどれだけ相続するか」という遺産分割協議を行います。相続内容に相続人全員が同意し、記名・実印による押印を済ませば、「遺産分割協議書」の出来上がりです。
遺産分割協議書には、相続人全員の印鑑証明・戸籍謄本もいっしょにしておきます。
万が一、協議がまとまらなかった場合は、家庭裁判所で調停・審判ということになり、それが終わるまで相続手続は行えません。
④ 所有権移転の名義変更
土地・建物の名義変更の「登記」は、上記の書類を持参して法務局で行います。
尚、「所有権移転の名義変更」は、司法書士の専門分野になります。
当事務所で遺産分割協議書の作成をご依頼頂いたお客様には、提携の司法書士をご紹介させて頂きすので、司法書士と面識のない方でもご安心ください。
預貯金、有価証券の名義変更
これらの名義変更には、金融機関それぞれに専用の様式がありますので、各機関にお問い合わせください。
《遺産分割協議書の作成の問題点》
① 相続人のうちたった一人と連絡が取れない、または押印に応じてくれない。
⇒ 家庭裁判所に調停・審判を申し込むことになります。遺産分割協議書が完成しない場合は、不動産の名義変更等の相続手続きは一切行えません。
② すべての相続財産を明らかにできるかどうか不明。
⇒ 万が一、負債の方が大きい場合は、そのままだと相続人は借金を背負うことになるので、通常は家庭裁判所に「相続放棄」の手続きをとりますが、これには「被相続人の死亡を知ってから3か月以内に行わなければならない」という決まりがあり、注意が必要です。
以上の点から、遺産分割協議書の作成は、相続人にかなりの時間的・金銭的負担を強いることになるので、自分名義の財産が一つでもある方は、元気なうちに遺言書を作成しておくことが望ましいと言えます。